遅くなりましたが、今期もアニメの製作委員会を考察していきます。
今回も、dアニメストアで配信されている深夜アニメのみを対象とします。
(夕方のアニメはビジネス構造が大きく違いますので)
はじめに用語説明
製作・・・アニメをつくるためにお金を出資すること
制作・・・アニメの映像をつくること
ワールドトリガー 3rdシーズン
第1期から変わらずのメンバーです。テレビ朝日と東映アニメーションは、プリキュアなどで昔から繋がりがあります。第3シーズンまで続くアニメは稀ですが、委員会メンバーが少ないことが意思決定の迅速化に貢献しているのでしょうか。
吸血鬼すぐ死ぬ
博報堂DYミュージック&ピクチャーズ(通称:MAP)が幹事の作品です。上位三社にビデオメーカー、原作出版社、アニメーション制作会社が名を連ね、BS11以降は他アニメでもちょいちょい見かけるメンバーですね。音響制作会社のスタジオマウスが出資第5位に来てるのも珍しいです。
月とライカと吸血姫
作風からもバンナムアーツの作品であることがなんとなくわかりますね。ビデオメーカーと原作出版社が上位にあります。ADKマーケティング・ソリューションズの製作委員会参加は最近わずかに増えてきている印象です。ADKでは、ADKエモーションズが夕方アニメに多く出資していますね。あくまで予想ですが、上位2社の制作費負担額が大きそうな印象です。
カードファイト!! ヴァンガード overDress Season2
ブシロードの単独製作です。ブシロードはこれまで単独でアニメを製作してきましたが、昨年に製作委員会への参加を発表しました。ですが、こちらの作品はシーズン1に引き続いて単独出資となりました。ヴァンガードはカードゲームですので、そちらを伸ばすためのアニメ制作とも考えられます(メディアミックス)。クレジットにある「製作総指揮・原案 木谷高明」が強すぎます。ブシロードの会長ですよ、この人。
進化の実~知らないうちに勝ち組人生~
かなり面白い面々です。まず、幹事がbilibiliですね。bilibiliは「ぼくたちのリメイク」でブシロードと共同出資し、またdアニメストアとは後述する「最果てのパラディン」で製作委員会を組織しています。ED曲がブシロード所属のアーティストなのも理解できます。双葉社は原作コミックを出しています。
ヴィジュアルプリズン
こちらもなかなかすごい。アニプレックスが幹事で、A-1 Picturesが制作です。アニプレックスとMAPという、日本最大級のビデオメーカー2社の共同出資はかなりレアではないでしょうか。シーエムアイはARIA entertainmentとも呼ばれ、本作品の音楽を担当したElements Gardenが所属する音楽制作ブランドです。この作品では、イケメンキャラが歌を歌います。おそらく、将来的には声優を活かしたライブイベントを想定しているのでしょう。残りのメンバーは他の作品でもちょくちょく見かけますね。ライブイベントはブシロードの強みでもあります。
ビルディバイド -#000000-
まさかのアニプレックス単独製作です。ビルディバイドはアニプレックスが販売するカードゲームです。そういう意味では、単独出資の方か権利関係をシンプルにできますね。ヴァンガードと全く同じタイプです。カードゲームを売るためのアニメ、とも解釈できます。
大正オトメ御伽話
この作品で注目すべきは、京楽産業ホールディングスですね。この会社は、自社の映像レーベル MAGNET で、「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」など数々の作品に出資してきました。また、2020年7月には映像事業部を新設しました。
ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド
Deep Insanityはスクエニのメディアミックス作品であり、2020年から漫画、ゲーム、アニメなどが発表されています。スクエニ原作のメディアミックス作品(ゲーム・アニメ)といえば、最近だと「すばらしきこのせかい」がありますね。
プラチナエンド
- TBSテレビ
- ポニーキャニオン
- ぴえろ
- BS11
- 電通
- メディコス・エンタテインメント
TBSとポニキャンは仲良しですね。「五等分の花嫁」や「地縛少年花子くん」でも共同出資をしていました。メディコス・エンタテインメントはグッズ会社です。
境界戦機
- SUNRISE BEYOND
SUNRISE BEYONDの単独製作ですが、企画協力にBANDAI SPIRITS、制作協力に電通がクレジットされています。
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました
角川の例の3人(菊池さん、工藤さん、青柳さん)が企画です。上位5社はよく見るメンバーなのですが、まさかのKBS京都が出資しています。KBS京都は深夜帯に多くのKADOKAWAアニメを放送しているのですが、出資はレアです。
プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~
- CyberAgent
- EXNOA
プラオレ!は、サイバーエージェントとDMM Gamesのメディアミックス作品で、すでにゲームも配信されています。EXNOAはDMM Gamesの会社です。面白いのが、この作品の製作が「プラオレ!メディアミックスパートナーズ」という、メディアミックスであるという事実を全面に打ち出している点ですね。
サクガン
- 創通
- サテライト
- BANDAI SPIRITS
- アスミック・エース
- サミー
- VAP
- 文化放送
- バンダイ
- バンダイナムコアーツ
- Fosun Entertainment Japan
- NetEase Games
- DeNA
すごい面子です。この作品は「Project ANIMA」という、DeNA、文化放送、創通、MBSが共同でオリジナルTVアニメシリーズを制作する大規模プロジェクトの一環です。第1弾「SF・ロボットアニメ部門」で準大賞を受賞したSF小説『削岩ラビリンスマーカー』を原案としています。サテライトはアニメ制作を担当しています。Fosun Entertainment Japan、NetEase Gamesという中国のエンターテイメント企業2社も出資しています。Fosun Entertainment Japanは中国の復星グループであることが推測できますが、ほとんど情報がありません。2020年に日本で法人登録されたばかりの会社です。
シキザクラ
- 中京テレビ放送
- サブリメイション
- 玉越
- 中日本興業
- K&Kデザイン
「ナゴヤアニメプロジェクト」という企画の通り、東海地方を舞台にしたアニメです。そのため、出資メンバーも東海地方の企業が主となります。また、中京テレビはこの作品を通じて初めてアニメに出資します。
先輩がうざい後輩の話
比較的メジャーな委員会メンバーです。ビデオメーカー幹事はキングレコードでしょう。ムービック、クロックワークスはよく見かけます。
暗界神使
テレビでは放送されていませんが、かなり面白い製作委員会なので紹介。
なんと企画が、BANDAI NAMCO Entertainment (SHANGHAI) CO., LTD.
上海にあるバンダイナムコエンターテインメントが、アニメに出資しています。
中国での配信を念頭に置いたオリジナルIPで、日本でも各サービスで配信されています。
詳しくはこの記事を参照。
takt op.Destiny
タクトオーパスは、DeNAとバンダイナムコアーツによるメディアミックス作品であり、2021年にゲームも配信予定です。そこに、制作のMAPPAも参加しています。
SELECTION PROJECT
KADOKAWAの本気のメディアミックス作品です。ディライトワークスはゲームの企画開発会社です。レッグスは、IPのプロモーションやマーケティングを行っています。レイは、広告は映像配信支援などを行っています。テレビ愛知は2話からクレジットに追加されました。アニメ出資はレアでしょう。
異世界食堂2
- テレビ東京
- クランチロール
- 主婦の友インフォス
- DMM pictures
- ATX
- 京楽産業ホールディングス
- OLM
- 日本アニメーション
- フライングドッグ
- クロックワークス
- テレビ大阪
- ポリゴンマジック
かなりの出資会社数です。テレビ東京はテレビ局の中でも比較的アニメ製作に力をいれています。第2位はクランチロールですが、海外では字幕配信がクランチロール、吹替配信をファニメーションが担当しています。ファニメーションは英語吹替が得意です。主婦の友インフォスは原作の出版社です。京楽産業は前述のMAGNETを指します。OLM、日本アニメーションはアニメ制作会社です。テレビ大阪はテレビ東京と関係性が強いです。ポリゴンマジックはCG制作などを行っています。
やくならマグカップも 二番窯
こちらも製作委員会メンバーの数が多いです。原作の日本アニメーション、
プラネットが出資上位です。MAHO FILMはアニメ制作会社です。また、かなりテレビ局の出資が多いですね。81プロデュースは声優事務所ですが、たまにアニメに出資しています。Zipangは、地域発の映画・アニメなどの映像作品プロデュースを行っています。この作品は、岐阜県多治見市が舞台になっていますからね。
最果てのパラディン
- bilibili
- OVERLAP
- ドコモ・アニメストア
出ましたbilibili。この作品も、ほとんどの出資はbilibiliではないでしょうか。OVERLAPはアニメーション制作です。dアニメストアはこの作品の見放題最速配信を行っています。
世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する
企画が、KADOKAWAの例の3人です。もう、KADOKAWA・角川メディアハウス・ATXはセットで覚えましょう。普段は幹事ビデオメーカーのバンダイナムコアーツも出資第2位で参加しています。クランチロールはアジア以外での配信権を持っています。グロービジョンは角川の関連会社で、外国映画・TVドラマ等の日本語吹替および字幕版制作を行っています。
86―エイティシックス―
アニプレックスとA-1 Picturesの自信作ですね。原作のKADOKAWAが第2位です。BANDAI SPIRITSはグッズ化権でしょうか。アニプレックスは自信のある作品ほど、製作委員会メンバーが少ない印象です。
テスラノート
- バンダイナムコアーツ
- ギャンビット
- ジェイアール東日本企画
- 講談社
- BS11
- ムービック
BNアーツがビデオメーカーです。ギャンビットはアニメーション制作です。ジェイアール東日本企画(広告代理店)を見るのは久しぶりですね。
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
このラインナップは最強ですね。大手ビデオメーカー3社が上位に来ています(ここではKADOKAWAは原作出版社)。グリーエンターテインメントは、比較的最近設立されたグリーのアニメ製作会社です。
テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編
特に解説することはないですね。ビデオメーカーのアニプレックス、原作コミック出版の集英社、アニメーション制作のufotable。余談ですが、鬼滅の刃は企画段階で、社内から強い反発があったそうです。
見える子ちゃん
特に解説することがないほど、お馴染みのメンバーです。角川の関連が多いですね。企画も、KADOKAWAの例の3人です。
今期作品の特徴
とにかくメディアミックスを事前に想定した作品が多いという点です。IP発表時点でゲームとアニメの制作を公表するなど、急激なメディアミックスが目立ちます。また、ブシロードとアニプレックスは、カードゲームを原作としたアニメを製作しています。メディアミックス想定作品は、ステークホルダー(出資者数)が少ないほうがスムーズに企画が決まるでしょう。