In-n-outとマクドナルド

マクドナルドのバーガーはまずい」

そう気づいたのは、アメリカのハンバーガーチェーン In-n-out でシンプルなバーガーを食べた時である。

私はそれまで、マクドナルドのヘビービジターであった。

暇があればマクドに行き、時間を潰すことが多々あった。

マクドナルドはバーガーの他にもサイドメニューが豊富である。

バーガーに限って言っても、常時10種類以上のバーガーと期間限定のメニューが存在する。

そのバラエティ豊かな品揃えは、顧客を飽きさせない一つの要因であろう。

私はマクドナルドが大好きであった。In-n-outを食べるまでは。

In-n-outを知らない人は多いであろう。

簡単に言えば、アメリカの有名なハンバーガーチェーンである。

日本のハンバーガーチェーンといえばマクドナルドやモスバーガーロッテリアなど数は限られるが、本場アメリカではその数は比にならない。

数あるハンバーガーチェーンの中でも、In-n-outは人気が高い。

ビジネスインサイダーの調査では、オススメのハンバーガーチェーンランキングで2位の座を手にしていた。 

(ちなみに1位はChick-fil-Aである)

その人気の秘密を、私は安さと美味しさであると考える。

一見両立しなさそうな2つであるが、In-n-outはやってのけたのだ。

美味しさは主観である。だが、アメリカ人の間では「マクドナルドよりもIn-n-outの方が断然美味しいしオススメである」というのが一般的な見方であるそうだ。

私は決してグルメレポーターではないので、その美味しさを表現することができない。

しいていえば、バンズの内側のサクサク具合が最高である。

In-n-out は食材の新鮮さを意識しているそうで、ジャガイモは店内でむいてカットし、フライにしている。

(ちなみにマクドナルドは冷凍でカットされてるものが店舗に運ばれる)

まあとにかく、In-n-outのバーガーは美味しいのだ。(強引な主張であることは重々承知している)

私が注目したいのは、安さである。

ロサンゼルスの場合、マクドナルドのハンバーガーは2.49ドルであるが、In-n-outのハンバーガーは2.10ドルである。

一見大した差には見えないが、In-n-outのバーガーはあくまで「この美味しさでこの値段!?」というクオリティに対する安さの驚きである。

私個人にしてみれば、2.49ドルの大したことないバーガーを食べるよりも、2.10ドルの美味しいバーガーを食べる方がよっぽど幸せなのだ。

では、この安さはどのように生まれるのだろうか。

結論を言えば、メニューの少なさである。

In-n-outには、3種類のハンバーガーとポテトしかメニューにない。

(まあトマトが入っていたり、輪切り玉ねぎに変えることができたりカスタマイズはできるが)

ハンバーガーが3種類しかないなんて、マクド好きの私にとってはかなりの衝撃であった。

ちなみにメニューは、ハンバーガーとチーズバーガー、それとDouble-Doubleというビックマックのようなもの、これらの3種類である。

テリヤキバーガーやチキンフィレオは邪道なのだ。

これらのハンバーガー、違いはチーズが入っているかどうか、あとパティやバンズの枚数しか違わないので、仕入れの品目が限られている。

少ない種類の材料を、大量に仕入れればいいのだ(まあ新鮮さの問題もあるので実際はどうかわからないが、扱う材料の少なさはアドバンテージである)。

マクドナルドではそうはいかない。あれだけ豊富なメニューを提供するのだから、それ相応の多様な材料が必要となる。

次に、人件費(特に教育コスト)を見る。

種類が少なければ従業員が覚えるメニューも少ないので、早く人材が育つ。

マクドナルドでは多様なメニューに対応するため、研修期間が長いことがある。研修期間でもかなり使えるようにはなるが、一人立ちをして現場を任せられるようになるには少し時間がかかる。さらに、マクドナルドのバーガーは、商品によって微妙に材料や手順が違うことがあるので、戸惑う新人も多い(体験談)。

経営学の視点で見ると、In-n-outの方が従業員一人当たりの教育コストが安いことになるのだ。

(ちなみに両者の厨房の様子やオペレーションにはあまり違いは見られなかった。)

個人的には、様々なメニューを持つマクドナルドはまるでレストランのようであるが、In-n-outはどちらかと言えば定食屋に近い。

前者は商品のバラエティなどの変化を望むが、後者はあくまで安定を望む。

定食屋の安さの秘密が、限られた商品の種類と変化のないオペレーション、そしてそれを求める安定した顧客層であるとするならば、まさにIn-n-outはこれらの条件を満たしていると言えるだろう。